汝の敵を愛せよ

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 「わあ!身体は建物で隠れてるけど映画の通り大きいな。吠えないのかな?」  周囲の喧騒が凄い。  集団で群れて騒いでいる。  ゴジラの咆哮さえ掻き消されそうだ。  ディオンはその場にへたり込んだ。  同じような人間の姿が目に付いた。  今、何時なんだろう。  珍しく少し気になる。  一体何時になったら、この街の明かりは消え、本当の朝を迎えるのだろうか。    「お兄さん、うちの店可愛い娘揃ってるよ。」  道端に座り込んでいる間、何度か同じような言葉を掛けられた。  ぼうっとして頭が働かないとはこの事か。  BLコミックはちゃんと手元にある。  その点だけには意識が働いた。  この街に留まり、太陽が昇るのを確認するべきなのか。  不思議と家に帰るという気にならない。  魔界に通じる臭いに親しみを覚えるからか。  「ああ、悪魔らしい事がしたい。」  
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