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匂いを辿ればいいだけだ。
下北沢の時程の動揺は無い。
それでも心臓が締め付けられる。
腰を上げ、背を伸ばすと地面が揺れた。
ゴジラが睨んでいる。
頭全体に靄が掛かり、辺りにいる多くの人々を影、或いは風に靡くペラペラの紙切れとして捉えた。
死期も魂も見えない。
同じ時、同じ場所にいながら、互いの存在は無いに等しい。
ヨエルの匂いを辿るディオンに関心を示す人間はいなかった。
───
ヨエルは、20代前後の二人の男達と共にいた。
ディオンが座り込んでいる時に声を掛けられ付いて行く事にしたのだ。
両脇から肩を抱かれ、傍目には仲が良さそうな三人連れに見える。
ゴジラヘッドが睨みを効かせる新宿東宝ビルの前の仲見世通りから、さくら通りに入り北方に進んでいく。
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