汝の敵を愛せよ

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 「此処だよ。少し暗いけど中に入れば明るいから。」  花道通りにある人気の無い暗い四階建てのビルの前で止まる。  ベランダが付いているので古びたアパートに見えなくもない。  窓ガラスには内側から紙が貼られていた。  中に入るとポストが並んでいて、上まで続く狭い階段と数人しか乗れないであろうエレベーターがあった。  「上、カラオケ店になってるからさ。今日は君と俺等の貸し切り。」  「カラオケ……ゴジラの卵は?」  「くっく、勿論あるよ。」  エレベーターではなく、話しながら階段を昇って行く。  ヨエルにとって此処は淀みの上をいっていた。  悲しそうな顔をした女性の霊が付いてくるのだ。  二階の踊場の前に金属製の扉があり、男の一人が鍵を入れて回す。  「ほら、入って。」  カチリと電気を付ける音と共に背中を押される。  照明があっても薄暗く感じた。  
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