迷える子羊は悪魔に導かれ天に昇る

汝の敵を愛せよ

　後日──
　ヨエルを廃ビルに連れ込んだ男達は警察の取り調べを受け語った。

　「俺達、天国を見たんですよ。」

　「ふざけるな！変なクスリやってたんだろう？少年を連れ込み変態プレイを強要しようとして逃げられ、互いにＳＭ道具使って掘り合っただけだろう！この、ど変態共が！」

　「違います。クスリで得られるようなチャチなもんじゃねえ。ホントの天国っすよ。」

　臨死体験。
　世界中で様々な臨死体験が伝わっている。
　男達はディオンに攻められ、天国の存在を肌で体感した。
　絶頂の度に魂が肉体を離れ、本当に天国に昇ったのかもしれない。
　それは仏教においてはニルヴァーナと称される境地。

　後々まで男達は語り続けた。

　其処は我も無く欲も無い、全て真っ白な世界。
　解き放たれた魂は、此の世とあの世の境に在る赤子よりも無垢に、宇宙のように広がり恍惚たる悟りに手が触れた。
　そして、其処に導いたのは悪魔のような天使だったのだ、と。

　その後、彼等は聖書の言葉を座右の銘とし、人を癒し救う事に人生を費やすようになったとか、ならなかったとか。
　本当に彼等の魂が天に昇ったかは、神のみぞ知る。