人はパンのみにて生くるにあらず

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人はパンのみにて生くるにあらず

 ピンポーン ピンポーン  「う、うん……」  ディオンはチャイムの音で目覚め、仰向けに身体を直そうとしたところで何かに阻まれた。  重い。  重力。  そうだ、人間界には重力がある。  「おはよう。ディオン。」  耳元で重力が囁いた。  甘やかな香りと声。  指に触れる滑らかな絹のような感触。  思わず両手でまさぐる。  柔らかい。  「あ……ん……誰か来たみたい。」  ディオンは途端に重力から解放された。
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