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港
僕は夢を見た。
何故か僕は港に立っている。
その港には何艘もの巨大な舟が停泊していた。
今までに見た事がない巨大な舟だ。
(ここは…どこなんだ?それに、こんなに大きな舟…初めて見た…)
暫く巨大な舟に目を奪われていたが、気付けば大勢の人々が舟の周りに集まっている。
僕は遠巻きに様子を見る事にした。
どうやら乗船する人々が集まっているらしい。
それぞれの舟に人々が集まっている。
(みんな舟に乗るのか…)
僕は、そんな事を考えながらボーッとその様子を眺めていた。
すると、突然背後から声を掛けられた。
「君も舟に乗るんだ。」
「はい?」
恐る恐る振り返ると、フード付きの服を着ている旅人のような男性が立っていた。
顔はフードに隠れて良く見えない。
(RPGゲームに出てくる旅人みたいだ…)
僕はそんな事を考えながら、その男性を見つめた。
「君もあの舟に乗船するんだ。」
僕が理解していないと思ったのだろうか?
男性は、ゆっくりハッキリと同じ言葉を繰り返した。
「え?そう言われても…どの舟に乗れば良いのか分かりません。」
「君なら分かる。」
「はい?言ってる意味が良く分かりませんが…」
「大丈夫。君なら分かるから。乗りたいと思う舟の乗船場に行ってみなさい。そして、心から安心できる舟ならば間違いはない。」
「はぁ…」
僕が曖昧な返事をすると、その男性は頷き去って行った。
暫くその場で固まっていたが、このままこうしていても仕方ない。
僕は意を決して、舟に向かって歩いて行った。
近くまで来ると、改めて巨大な舟に圧倒された。
「本当に僕が乗る舟なんてあるのかな…知ってる人がいると良いけど…」
僕は、不安になりキョロキョロと周りを見た。
すると、そこに見知った姿を発見した。
「あ!ユウキだ!」
ユウキは、クラスで一際目立つタイプであり、スポーツ万能だ。
しかし、性格に難ありでよく問題を起こしている。
僕はユウキに声を掛けようとしたが思い留まった。
「ユウキは苦手なんだよな…一緒の舟に乗るのも不安だな…そうだ!ユウキがどの舟に乗るのか様子を見よう。」
ユウキが向かった舟には、沢山の人達が群がっていた。
しかし、なんだか様子がおかしい。
僕はもう少し近くに寄ってみた。
すると、何事か揉めているらしい。
「おい!いつまで待たせるんだ!早く舟に乗せろ!」
「俺は年寄りだから、優先に乗せてもらえるんだろうな!」
「おい!順番抜かすな!」
「はあ?順番なんて守ってられるか!」
「なんだと!」
とうとう喧嘩まで始まった。
僕は思わず後ずさりをして他の舟を見た。
すると、今度は大人しく順番を待っている人々がいる舟に目が止まった。
すると、その列にケイタを発見した。
ケイタは、あまりクラスで目立たないタイプだ。
僕はケイタに声を掛けようとした。
「お〜い。ケイ……」
その時、小さな女の子がケイタの近くで転んだ。
女の子は、泣き出しうずくまっている。
しかし、ケイタも同じ列に並んでる人も誰も女の子に声を掛けない。
僕は見ていられなくなり女の子に駆け寄った。
「大丈夫?痛かったよね?ママはどこ?」
女の子をそっと抱き起こした時に、ケイタが僕を見た。
「放っておけば?関わると面倒だよ。そもそも目を離した親が悪いんだしさ。」
「え?こんなに泣いてるのに放っておけないよ。」
すると、ケイタと同じ列に並ぶ他の人々も僕を見て口々に言い出した。
「放っておけばいいのに。」
「自分から面倒な事に首を突っ込んでバカみたい。」
「そうそう。人と関わるなんて面倒。」
僕は、その言葉にカチンときたが無視をする事にし、女の子にもう一度声を掛けた。
「大丈夫?」
女の子は両手で涙を拭いながらニコッと笑った。
「お兄ちゃん、ありがとう。大丈夫だよ。」
すると、スクッと立ち上がった女の子は見る見る間に美しい女性の天使に変わっていった。
気が付けば、その隣には旅人の服を身にまとった先程の男性が立っている。
彼も美しい男性の天使の姿に変わった。
僕は、ただただ驚き2人を交互に見ていると、女性の天使がニッコリと笑った。
「もう、あなたが乗る舟は分かったでしょう?」
僕は頷き答えた。
「僕が乗りたい舟…ですよね。」
「そう。君が乗りたい舟に行きなさい。」
男性の天使が力強く答えると、僕は一艘の舟に向かい歩き出した。
本当は分かっていた。
どの舟に乗るべきか…
僕は、美しい光に包まれた舟を見上げ思った。
そう…これが、僕が乗る舟…
僕は、そこで目が覚めた。
「今の夢、なんだったんだ…めちゃくちゃリアルだったし。」
その時、どこからともなく声が聞こえた。
「舟は君の乗船を待っている。」
それは、あの天使の声だった。
僕は驚き周りを見回したが、当然ながら誰もいない。
「気のせいか…」
僕は呟くとベッドから降り窓を開けた。
心地よい春風が優しく頬を撫でる。
「君は必ず、あの舟に乗るだろう…」
微かに聞こえた声は、春風に乗って消えて
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