メモリーズ

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 切り取りメモに貼り付けた二つの記憶。  キセルの煙を吐きかける母の顔と、死んだような目をした花子の顔が並ぶ。    メモリーボックスに収めますか? 収めませんか? (収めません)  海馬から削除しますか? 削除しませんか? (削除します)    本当にいいのですね? 失くした記憶は二度と戻りません  了解しました、のチェックボックスにレ点を入れて削除ボタンを押した。 (どうしたのだろうか、こんなにも心臓がうるさいのは……? 私は一体何をしていたのだ?)  気付けば目の前には空っぽのメモ帳だけが広げられている。  ただパソコンと繋がる電極パッドは、自分のメモリーを再生できる状態となっているから自分はきっと思い出を探そうとしていたのだろう。  源一郎は、次々と自分の生涯の記録を切り取って確認を始めた。
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