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「あんた、またそんな馬鹿なこと言ってるの? 育ち方を悩むぐらいなら、彼女作る為にどんな工夫したらいいか考えた方がいいわよ。母さんならそういうところで青春の貴重な時間を使うわね」
ぐうの音も出ない。しかし個性がない以上、どの角度から攻めたらよいのか。安定した隙の少ない攻撃もなければ、ここぞというところで繰り出す必殺技もない。運命的な出会いなんて当然経験したことないし、こんな凡庸な奴にどうやったら彼女なんてものができるのか。
「正論は時に人を傷つけるのに。なんて優しくない母親だ」
しかし母さんの言うことももっともかもしれない。今の自分に不満があるなら、ここから良くしていくしかない。どうやら過去は変えられないらしいし。
没個性。今年こそはこの命題をクリアしてみせよう。十六歳の佐藤悠は一味違うぜ。そう固く誓って、僕は男らしくパンを飲み込んだ。――そして盛大にむせた。
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中間テストが終わり、文化祭へ向けた準備で学校中がなんとなく浮き足立っていた。
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