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朝比奈先生は確か僕らの倍ぐらいの年齢だ。歳の割に若く見えるのは、目が小さく黒目がちに見えるせいかもしれない。いつもスーツを着ているが、低い身長のせいか余り似合ってはいない。指輪をしていないので、恐らく独身なのだろう。恋人が居るかどうかはわからない。自分があの歳になった時にはパートナーが居ることを祈る。
無駄な人間観察をしている間も議論は進む。結局フードにはカントリーマァムとリッツを提供することに決まり、文化祭の会議は終了した。
「じゃあ、文化祭に間に合うように各自準備を進めてください。お前ら青春できるのなんて学生の間だけなんだからな。興味ないとか言わないでしっかり参加しろよ」
後半やけに兄貴目線になりながら、朝比奈先生が話を締める。確かに、青春は今だけだ。この時期に彼女が居ると居ないとでは大きな違いだ。僕はそろそろ真剣に取り組むべきなのかもしれない。
「ああそれから、これはもう知ってるかもしれないが――」そこで一瞬間を置くと、神妙な表情になり、先生は続けた。「――昨日、雪宮商店街の近くで、殺人事件があったそうだ」
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