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不謹慎な表現かもしれないが、僕はドキドキしていた。退屈な日常に突如として訪れた事件。自分が巻き込まれたわけではないが、近くに殺人犯が潜んでいるかもしれないという程よい緊張感。
程よい? 待て待て、人が死んでるんだぞ。批難されることがわかっているので、口には出さない。しかし、もう少し事件について調べてみたい。そんな好奇心を持つことは悪いことだろうか。
由香里を見ると、片手で頬杖をついたままスマートフォンの画面に指を滑らせている。
「早速呟いてるの?」
「うん。不謹慎とか言わないでよね。怖い気持ちを吐露してるだけなんだから」
「あぁ、言わないよ」
そう言って僕はニュースサイトのページをいくつかブックマークした。心なしかいつもより重く聴こえるチャイムとともに、帰りのホームルームは終了となった。
◆
放課後に入ると同時に僕らはカバンを背負い、帰宅部の本分を果たすべく立ち上がる。すなわち、帰宅だ。
「帰りにドーナツ食べてかない?」由香里が言う。
「いいね。正宗も行くだろ?」僕が応える。
「応」正宗が頷く。
「じゃ、僕も」平山が立ち上がる。
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