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ドーナツをこよなく愛する由香里の希望で、駅前のミスドには週一ペースで集まっている。今日の話題は例の殺人事件だろうな。そんなことを考えながらぞろぞろと教室を出たところで、肩をポンと叩かれた。
「よう佐藤。ちょっと時間ある?」
声の主は文化祭実行委員の山下だった。ワックスでソフトにスタイリングしたアッシュカラーの髪。自然さを残しながら丁寧に整えられた眉毛に目が行く。確か、サッカー部では一年生にしてレギュラー入り。モテるには理由があるね。モテない僕は、彼の電話番号も知らない。
「いいけど、僕だけ?」
「そう、僕だけ」
山下がニヤリと笑う。整った歯並びが覗く。
何となく見当は付く。おそらくこれは、文化祭に関わる何かだろうなと。
「さすが悠、男にモテるね。じゃ、私たち先行ってるから」
クラスメイトのイケメンに特に興味がないのか、由香里が率先してフェードアウトする。
「後でな」
「後でね」
正宗と平山も続いて訓練された特殊部隊のようにスムーズに下校していく。
「どっか遊びに行くとこだった? 悪いな。サクッと本題から話すわ」
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