退屈な日常に与えられるべき刺激的なサプリメント

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退屈な日常に与えられるべき刺激的なサプリメント

   第一章  スマートフォンのアラームが朝を告げている。十月に入って間もないが、明け方の空気が冷たさを帯び始めている。それはつまり、布団を抜け出すのに非常な困難を伴うようになったということだ。おもむろにアラームを止めると、僕は布団の中で身体を丸めた。  昨夜十六歳の誕生日を迎えた高校一年生、佐藤(ゆう)は昨年と同じ悩みを継続して抱えていた。即ち、没個性という問題だ。  身長は一六八センチ。これといって特徴はないが、愛嬌のある顔だと自分では思ってる。走るのはそんなに速くないが、小さい頃に野球をやっていたおかげで持久力と球技のセンスは悪くない……と思う。テストの点数は得意な国語以外ほぼ平均点。要するに、可もなく不可もなく、というやつだ。 「そもそも名前からして平凡なんだ」  佐藤で始まり、悠で締める。苗字が全国レベルでありふれてるのだから、下の名前だけでも工夫してくれたらよかったのに。同じ学年には田中竜牙(りゅうが)とか、池田加符華(かふか)なんて奴もいたはずだ。——正直センスが良いとは思わないが、少なくとも個性的ではある。
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