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布団から出たくない一心で現実逃避の不毛な思索を延長したかったが、目覚ましのスヌーズ機能は持ち主を再度起こすべきだと判断したらしい。けたたましいアラームが再び鳴り響き、朝の知的思考タイムは強制終了されてしまった。
◆
「母さんは疑問に思わなかったの?」
制服のブレザーに着替えた僕は、ダイニングでトーストを頬張りながら質問を投げかけた。リビングのテレビからは主婦向け情報番組の品のない音声が流れている。
いつ通りの我が家の朝だ。父さんは仕事の都合で家を出る時間が早い。僕がのそのそ起きてくる頃には既に居なくなっていて、母さんと二人で朝食を取るのが僕にとってはいつも通りの朝だ。
「何か言った?」
コーヒーをカップにつぎながら母さんが言った。テレビの音で聞こえなかったのか、そもそも聞く気がなかったのか。あるいはその両方かもしれない。
「だからさ、僕の育て方間違えたかもって思わない? ほら見てよ。無個性の塊みたいな高校生に仕上がってるよ」
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