退屈な日常に与えられるべき刺激的なサプリメント

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 ブレザーの下に着た黒いパーカーのフードをかぶり、長めの前髪が片目を隠している。まるで漫画に出てくるアサシンのような出で立ちだ。ただし、身長が低いせいでどこか可愛らしく見えるのが正宗クォリティー。 「うっさいチビ。あんたこそデフォで目に隈があるくせによく言うわ。どうせまた深夜アニメでも観てたんでしょ」 「おいチビって言うな藍澤。お前も身長俺と同じぐらいだろうが」 「女の子と比べてどうすんのよ。平均も需要も全然違うでしょ」 「まあまあ二人とも。もうすぐホームルーム始まるよ。あ、それより春樹が来てないけど、誰か連絡来てる?」  取っ組み合いになる前に話を逸らす。にらみ合いをしていた二人は、そろって携帯を見て首を横に振る。 「あいつすぐサボるからなぁ」春樹のド派手な金髪を思い出して呟く。  事実彼は昇降口まで来ておきながら、自販機で苺オレを買ってそのまま帰宅したこともある。春樹を朝から下校時刻まで教室に縛り付けるのは、それだけで一仕事だ。 「やれやれだな。学生の本分は勉強だというのに」  正宗はいつの間にかかばんから取り出した分厚い医学書を広げている。
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