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「アンタいつから医者目指してる設定になったわけ? 昨日まで文学少年気取って読んでたドストエフスキー、あのペースでほんとに読み終わったの?」
由香里が正宗の無節操な好奇心を鼻で笑う。確かに僕から見ても正宗のチョイスはよくわからない上に、ラノベ以外の本を最後まで読み終えたという話をほとんど聞かない。
「お前が病気になっても助けないからな、覚えておけよ。絶対だ」
本に目を向けたまま彼は答えたが、由香里は両手を広げて肩を竦めて見せる。やがてチャイムが鳴り、朝のホームルームが始まった。春樹が居ないことを含めて、いつも通りの朝だ。
ようやく普段と違う出来事が起こり始めたのは、放課後のことだった。
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