本音

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本音

 中野君は少々参った様な表情をし、少し照れた様に話し始める。 「そうだよ。俺は中村さんに、冷たくしていたよ」  やっぱり。私の勘違いじゃなかったのね。  昔はあんなに優しかったのに、と思い少し残念な思いが湧く。そんな様子の私を前に、中野君は話を続ける。 「中村さん、一年生の頃の事を覚えている? 二人で一緒に話したりしたんだけどさ」  中野君も覚えてくれたんだ……。嬉しさと残念さが混ぜ合わさった状態で、私は頷く。 「そっか。覚えててくれたか。  今年になってお前と同じクラスになった時、また話したいと思ってた。でも、俺は女子と話す事が苦手だったから、どうやって近づけばいいのか分からなかった__」  そうだ、中野君、一年生の頃も私以外の女子とはあまり話してなかったな……。中野君も私程ではなかったけれど人見知りだったのかもね。 「だから」と、中野君は続ける。 「まず俺は、中村さんに俺の存在を認識させる事から始めたんだ。優しくしたり話しかけるのが無理だったから、わざと冷たくして印象に残させるしかなかった」  中野君が申し訳なさそうに言う。  __確かに冷たくしたら相手の印象に残るかもね。中野君の場合、冷たくして来る癖に優しくして来る時もあるから尚更__。 「ごめんな」と、中野君は私に謝ってくる。 「俺が冷たくしていたせいで中村さんが傷ついてる事は分かってたんだ。なのに冷たくし続けていたって最低だよな……。だから俺は話したいと思っているけど、中村さんが嫌ならその時は受け入れる。……さぁ、本音を聞かせてくれ」  中野君の問いに、私は考える。  確かに中野君の態度には傷ついた時もあった……。でも、中野君が私に冷たくしていたのは話したい気持ちの裏返しでもあって……。だからこれを後ろ向きに考える必要はないんじゃないかな。だって、そのぐらい私は好かれていたんだから。  数秒考え、私は応える。 「確かに中野君の態度には傷ついた時もあったよ。でも、私が何故中野君に冷たくされているのかという疑問を持っていたって事は、私も中野君に関心があるからだよね。だから、また昔みたいに話そうよ」  にっこりと笑って尋ねたら、中野君は無表情で近づいて来て、耳元でそっと呟いた。 「………ごめんな……………」  一言だけ言うと、中野君は教室に戻っていった。
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