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とにかく喧嘩腰で接したのは自分なのだから今更「やっぱり明日がいい」なんて言えない。かっこ悪すぎる。
昇降口に行くとすでに相手は待っていて、里奈の姿を見ると「よお」なんて気楽に挨拶してきた。
「で、話って?」
「それはどっかてきとーに場所変えてから。アンタもてるんでしょ。一緒にいて友達に変な誤解されたくないし」
言ってそのまま歩き出すと後ろからついてきてるようだ。たぶん里奈のことを見ているのだろうが今はあの悪寒は感じない。とりあえずどこか店に入つ雰囲気じゃないので公園でも行くか、と心を決める。
「歩きながらでもいいや。アンタ何で私のこと見てたの」
「気になってたから」
「どういう意味で気になってたの」
すると勇哉は面白そうにへえ、とつぶやいた。
「ここで顔赤くして『何言ってんの』とか言ったら殴ろうかと思ってたけど。さすがにそこまで馬鹿じゃねーか」
いきなりの暴言に呆気に取られたが、すぐに気持ちを引き締める。負けるか、なんてよくわからない意地が生まれた。
「何が馬鹿だって?」
「だってあそこまでロコツに見てんのに何の接触もねーし。つーか俺が見てんの気がついたの最近だろ?俺の方見向きもしなかったもんな」
う、と思わず言葉がつまる。おっしゃるとおりです、友人に言われるまで気がつきませんでした。胸中でつぶやくが、それを表情には出さずに何でもなさを装う。
「めんどくさい。何かいいたことあるなら最初から言えば?アンタが余計な事するから友達がぎゃーぎゃー騒いでんだから」
「俺が気があって見てるって?そのダチあほじゃねー?俺のダチは俺がそんなつもりじゃないってソッコーきがついたっつーのに」
「ああもう。そんな事いいから。目的何?何で見てたの。まわりくどいやり方してさ」
そこまで話して公園についた。小さな公園で遊んでいる子供とかはいない。普段あまり人は寄り付かない所だ。男と二人っきりで人気の少ないところなんて女として危機感が足りないかなと思ったが、いざとなったらどうにかなるだろうと気楽に構えた。自販機でジュースを買い、ベンチに座る。勇哉は座る気配はなく、木に寄りかかっている。
「まわりくどくしなきゃなんなかったんだよ。俺はお前の事何も知らなかったからな。下手に近づいて火傷とかしたくねーし」
「どういう意味?」
すると勇哉は「あー……」と少し考え込んでいる。何か説明しづらいことなのだろうか。
「それ話す前に聞きてーんだけど。お前宇宙人いると思うか」
いきなり何の関係もないことを聞かれ、里奈は戸惑った。話をそらそうとしているわけではなさそうだ。とりあえず素直に答えてみる。
「いるかもね」
そう言うと勇哉はふうん、と面白そうに里奈を見た。
「じゃツチノコはいると思うか」
「探せばいるかもね」
「未確認生物は」
「もしかしたらどこかに潜んでるかもね」
「妖怪とかは」
「いてもおかしくないね」
そこまで一気に答えると急に勇哉は黙った。何か気に触ることでも言っただろうかと考えていると、勇哉はふっと笑った。
「お前変な奴だな」
「失礼な。自分の事棚に上げて何いってんの」
呆れて言い返すと今度はおかしそうに声をあげて笑った。今更だが普通に笑えんじゃん、とか思ってしまう。少し、ピリピリした雰囲気が柔らかくなった気がした。勇哉も、里奈自身も。
「じゃ、話してやるよ。言ってもどうせ信じねーだろうからてきとーに聞き流せ」
今から自分の事を話すというのに言い方はまるで他人事だ。
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