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翌日、約一ヶ月ぶりのプールに来た。
毎週通っていたからすごく久々な気がする。
プール独特の塩素の匂いが嬉しい。
受付にシオリちゃんの姿はなく、だよな、日曜日は休みのはずだと納得する。
でもあれ? 監視員の人達が着る山吹色のTシャツを着た、知らない若い男性がいる。
「こんにちはー」
「……こんにちは」
いつもなら、特に気にしない。
新しい見かけない顔だな、と思うくらい。
咲田さんのように、初対面の人にスラスラと話しかける程社交的でもないし。
けれどどうしても気になって、声をかけた。
「新しいアルバイトの方ですか?」
「はい、そうです。先週からお世話になっています」
「……そうですか」
なんとなく、いやな予感がする。
日曜は休みだと知りながら聞いてみる。
「いつも受付にいる槙野さん、今日は?」
「あ、槙野さんがここの仕事を辞めるので、僕その代わりなんですよ」
は……?
「──辞める?」
「はい、先週いっぱいで辞めましたけど」
「なんで?」
「さあ、詳しくは知りませんけど忙しくなるみたいで、プールには来られないそうです」
「……」
「……あの、どうかしました? 今日、今、泳ぎに来ていますよ? 本人に聞いてみたらいいんじゃないですか?」
驚きで動きが止まった俺を不思議そうに見ながら、その若い彼が首を傾げた。
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