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「文緒さんの口から子どもの話題が出るとは思わなかったから、驚いた」
「えぇ? それはだってねえ、年齢もあるし全く考えてないことはないよ。暉くんは? 欲しいと思うことある?」
「俺は……俺たちの子どもと会いたい気持ちは常にあるよ」
つき合って直ぐに結婚した事もあり、結婚当初は、しばらくは二人でいようという話はした。タイミングを見て考えようと。ただ未だに避妊はしているし、来てくれたらも何もコウノトリが運んで来てくれるはずがない。
「でも妊娠出産子育てなんて、今の生活じゃ現実的に無理じゃない? 具体的にどうやって進めるんだろうね? 私が今の仕事しているうちは難しいよ」
そんなことない、何とかなるよと、簡単には言えない。地理的に、お互いの職場の真ん中に家を借りる事も不可能だ。
「授かりものだから、いつそうなってもいいように準備できたらなとは思うよ」
「でも、暉君が産むわけじゃないでしょ? 私のタイミングって話じゃない」
「それはそうだけど、二人の子どもでしょ、文緒さんだけに任せるなんて事しないよ。
ただ出産だけは代われないから……」
そう言うと文緒さんは、「へぇー、暉君はいいパパになりそうね」と、笑って頷いた。
「今の職場はすごく好きなんだけどね」
「うん……」
それはすごくわかる。
異動願いすら本意ではないことも。
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