side 暉 27歳 2月、3月

2/9
前へ
/118ページ
次へ
「どういうタイプの人が好きなの?」 「え、タイプ……」 「芸能人で言うと誰? イケメン?」 「私、シオちゃんには年上が合うと思うんだよね、知的な感じの」 「あー、わかるわかる。そんな感じするー」  店員が注文を取りに来たので顔を上げると、誰かの視線を感じ、そちらを見た。  今まさに話題の中心にいたシオリちゃんとバッチリ目が合う。彼女は驚いた様に目を見開くと、すぐに逸らした。 「……?」 なんだ? 「好きなタイプは、爽やかなイケメンです!ええと、ゴウアヤノです」 「ゴウアヤノ、爽やか系じゃないじゃーん」 「き、既婚者じゃない方がいいですね」 「はー? あったりまえじゃん! アハハ」 「あはは、あったりまえですよ」  彼女、間違えて酒飲んでないよな……?  それ程遅い時間にならずお開きになった。皆すぐに帰路に就き、残されたのはいつものメンバー。  美南さんは忘れ物を取りに店内に戻り、 咲田さんもついでにトイレに行ってくると言ってその場を離れた。  歩道の端に、行き交う車の流れをぼんやりと眺めるシオリちゃんが立っている。どこか儚げで、本当に間違えてアルコールでも入ったんじゃないか、と苦笑しながら近づいた。いつもの彼女らしくない。
/118ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2183人が本棚に入れています
本棚に追加