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「……すごく、嬉しいです。これまで子どもに触れる機会がほとんど無かったので、心配していたんです」
そう言って照れたような顔を見せるが、
やはり横を向き、こちらを見ようとしない。
「シオリちゃんは子どもと接する仕事とか 向いてそうですね。それに、いいお母さんになりそうです」
幼子に優しい口調で語りかける彼女を見ていたらつい、思いっきり的外れな、言わなくてもいい事を口にしていた。
「えっ、お母さんですか? まだ早い!」
「あ、そうですね。だけどいつ誰と出会ってどうなるかなんて分からないから」
何を言ってるんだ、俺は。
「いつ誰と出会ってどうなるか、か……運命の出会いみたいなもの、私にもあるのかな」
運命の出会い?
「芳野さんもそうでした? 奥様と出会った時、この人だってピンときましたか?」
平然とした顔、でも真剣な目で唐突にそう聞かれ、一瞬どう答えたら良いのか分からない。シオリちゃんから俺自身の事を聞かれるのもめずらしい。
「……そうですね。この人だって、思ったかもしれません」
「あー、やっぱりそうですかー。いいなぁ、そういうの」
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