side 暉 27歳 2月、3月

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 普段ならこんな立ち話などしない。 挨拶を交わし、せいぜい一言二言。今のは、明らかにお互い不自然だった。  少し苦笑いしながら俯いたシオリちゃんを見て、思考が鈍る。何故こんな話……。 「あっ、大変だよ芳野さん! この休憩時間終わったら、あと一時間しか泳げません!」 「そうでした。泳いできます」  慌てたふりをして、更衣室へ入る。  荷物をロッカーに入れ、ため息が漏れた。  なんだこれ……。  少し、動揺している。  何にだろう。  彼女にあんな顔を、させたくなかった。  楽しそうに笑うところを、見ていたいと思った。  好かれている等関係なく、シオリちゃんは俺にとって、好ましい人だ。  凛として、真っ直ぐで。 ここに来ると安心する。彼女を見ると自然と口角が上がる。そんな風に思う資格も深入りする気もないのに、そう思う。  文緒さんが居ない日常を淋しく感じているからだろうか。 満たされていたら、こんな気持ちにはならなかっただろうか。……わからない。  とにかく冷静になろうと思いながら、 シャワーを浴びプールに向かった。
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