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泳ぎ終えて着替えていると、咲田さんに夕食兼飲みに誘われる。そういえば久々だなと思いながら、ああでもシオリちゃんも一緒だろうかと少し躊躇う。避けるつもりはないけれど、結局そうなってしまう。
荷物をまとめスマフォを確認すると、何件もの不在着信がある事に気付く。あれ、と思っている間に、再びスマフォが震え出す。
文緒さんからの着信だった。
「はい」
『ああ、やっと出た。暉君、今どこ?』
「今、プールに居るけど」
『ああ、そっか、今日泳ぐ日だったね』
「うん、どうしたの? なんかあった?」
『話があって、今車で帰っているところ。プールならW町のスポセンでしょ? 近くに居るから迎えに行ってもいい? お腹空いたからどこかでごはん食べない?』
「ごはん? いいよ」
俺も車だけど、まあいいか。後で取りに来れば。
時刻は20時半。よく分からないが、様子のおかしい文緒さんに合わせることにした。
通話を切り、咲田さんに「すみません」と、ひと言断りを入れ、急いで外に出た。
話がある? なんだろう。引っ越しの時といい、言わないからな、あの人。──不安。
迎えに来た車に乗り込み、文緒さんの顔を見たら特に変わった様子はなくホッとする。
「着信:芳野文緒って、あんなに表示された事無いんですけど。何かあったかと思った」
「え――っ? そんなにかけたかなぁ」
プールからそれ程遠くない場所にある、
夜遅くまで営業している洋食屋に入った。
たまたま思い付きでこの店を選んだけれど、ここは二人の思い出の店でもあった。
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