side 暉 28歳 4月

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 衝撃が大きくて、鼓動が早くなる。けれど頭は不思議と冷静で、目が、診断書に書かれた病名と文字を読み取ろうとする。  文緒さんの口からは、早期に発見された為悲観していないという事、これからの治療の内容とスケジュールを説明される。 「……今、体調は? 身体は辛くないの?」 「うん全然大丈夫、お腹も減っているし」 「……」  言ってスッキリという顔をして笑っているけれど、俺は全然笑えない。  一通り理解したところで、ゆっくり深呼吸をする。落ち着いて話を切り出した。 「これは、いつ分かった事なの?」  いつからこんな話になっていたのか。文緒さん自身はもう覚悟を決めて、戸惑う様子もなく淡々と、決定事項として話してくる。 おかしくないか? いや、おかしいよ。 「今年に入って受けた会社の健康診断でまず引っかかって、それから二月三月はいろいろと検査を受けて────」  その間、毎週末一緒に居たじゃないか。 話す機会がなかったわけではない。なんで? 「だって医者からの病状の説明を聞くのに、当然ご家族の方もって言われるでしょ?」 「まぁそうなんだけど、病院の予約も平日だったし、近ければすぐに来てもらうけど、遠いし、暉君も大変だろうと思って」 「一人で説明を受けたの?」 「ああそれが、たまたま事情を知った職場の上司が、病院まで送ってくれて……」  職場の上司? 送ってくれて?    ……いいや、その話は後だ。
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