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翌朝、一から十まで話をした。
誕生日だからお祝いしようという気には全くなれず……。
知り合いに勧められた病院で、すでにセカンドオピニオンを受け、主治医の女性医師と相性が良く信頼できるという事、入院の期間や退院後も、一定期間は治療で通院しなければならない事、ひと月近く有給+休職扱いだが、職場とは連携を取れる状態にしておきたい事、上司や同僚は事情を知っており、協力体制が整っている事──。
「ごめんね、いろいろ考えるとこっちに居た方が都合が良くて」
「うん。それは、わかった」
「働きながら治療を続けている人も居るし、私も今のところはそれを目指してる。環境的にはすごく恵まれていると思うから」
それも、理解しています。
「来週、入院する時に病院に一緒に行くよ」
「ああうん、でもいいのに。平日だし急だから……。それより手術の日に来てもらえるとありがたいのだけど」
「手術の日て。あのね、それは勿論、行くに決まってるの。手術の間、病院内に居るし」
疎外感が否めない。そもそも最初から俺を当てにするつもりがなかった事が、ひしひしと伝わってくる。
ただつき合っているだけの関係だって、もう少し頼りにされるのではなかろうか。何なんだよそれはと、時折笑ってしまうくらいに。
けど考えないことにしている。考えたら、何か得体の知れないモノに飲み込まれそうだった。今は寄り添おうと、文緒さんが必要と思う場所に居ようと、決めたから。
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