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これは修羅場というやつなのだろうか。テレビとかでよく見るやつ。浮気相手と会っているときに、偶然彼氏と鉢合わせちゃうやつ。
って、あたし浅倉君と何もない。浮気なんてしてない。じゃあ、これは別に修羅場ではないということか。
「ゆ、結衣。誰だよこの男?知り合い?」
「え。あっ……、」
浅倉君とは話が通じないと思ったらしく、彼は焦った口調で会話の相手をあたしにチェンジ。
急に話を振られ、客観的にこの状況を見ていたあたしは、すぐに上手い言葉が出てこない。
「えっ、と……」
別に悪いことはしてない。ただ浅倉君にアパートまで送ってもらっただけ。それを伝えればいいだけなのに、あたしを振り返った浅倉君と目が合うと、途端に喉の奥がグっと熱くなった。
─────『大事にされてねぇんだな』
なぜか、このタイミングで浅倉君の言葉が脳内を占める。放とうとした言葉が喉に突っかかって出てこない。
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