2.変わらない女

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昔付き合っていた人と再会するとこんな気持ちになるんだろうか。ちょっと切なくて、寂しくて、懐かしくて。当時彼のことを好きだった自分を思い出すと可愛いとすら思う。 必死だった。一生懸命だった。好きで好きで堪らなかった。このまま何年先も一緒にいられると、本気で思ってた。 浅はかで、幼稚で、脆弱な考えだったと今なら分かる。 彼を好きになった中学2年生のあたしに教えてあげたい。 好きに終わりはある。一生も絶対もないし、恋は呆気ないし、気持ちは変わる。恋人がいたって、人は簡単に浮気する。 「……、」 そしてあたしはそれを許すような、バカな女になる。 もっと恋愛が上手くできる、器用で大人な女になりたかったんだけど。 この角を曲がるとアパートが見える。あたしと同じ歩幅で歩く彼を一瞥すると、風で前髪がふわりと揺れていた。 柔らかそうな黒髪。整った綺麗な横顔。横から見る鼻が好きだったなあ、なんて笑ってしまうようなことを思っていれば「ねえ、」と彼は前を見据えたまま口を開いた。
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