2255人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんですか」
角を曲がる。アパートが見えた。もうちょっとで着く。
「吉村さんの彼氏。どんな奴?」
「……え、急ですね」
「浮気するような男、どんな奴か興味あるだけ」
「……、」
それを知ってあたしをバカにするネタにするんじゃないだろうか。なくもない可能性を考えて黙っていれば彼の双眸がこっちへ向く。
「吉村さんがどんな奴と付き合ってるのかも」
「……」
「俺と別れた後に」
ドクン、と激しく鼓動した心臓。
彼はやっぱりちゃんと記憶していたらしい。あたしを昔付き合っていた女だと。ただのクラスメートじゃなかった。
視線が絡んだまま、お互い心を探るように見つめ合う。歩くスピードが落ちたことで、あと少しで着くアパートを遠くに感じる。
「……どんな奴って聞かれても……」
「何。すげーブサイクとか?」
「ブ、ブサイクって」
「ゴリラみたいな奴と付き合ってんの?」
どんな奴だよそれ。呆れた顔を宙に向け、「んー……」と唸りながらも足は前へと進んでいる。
最初のコメントを投稿しよう!