2.変わらない女

31/32
前へ
/474ページ
次へ
「……運動好き、な感じ」 「何だそれ」 「サークル入ってるから。フットサルの」 「ふーん」 「あと、人懐っこいかも」 「それは浮気するな」 何とも適当な返しに苦笑いを浮かべる。 こういう性格だから浮気するとか、そんなの浮気した後だから言えることだ。まさか自分の彼氏が4度も浮気するような人なんて、付き合い当初のあたしは思っていなかった。 活発で、よく喋って、顔が広そうな人だとは思っていたけど、その交流の広さが浮気に繋がるとは。 「嫌になっちゃうよね」 はは、と自分でも笑えてしまうほど。視線を下げたまま笑えば、思ったよりも乾いた笑い声で妙に恥ずかしくなる。 だけど、横にいる彼は揶揄することはなく、それどころか真面目なトーンで言葉を紡いだ。 「大事にされてねぇんだな」 「え……、」 「アホらしいな、ホント」 「……」 「壊せばいいのに、そんな関係」 「……っ、」 別れた方がいいって、明日香に何度も言われているのに。彼に同じことを言われたら泣きそうになってしまうくらい、胸の奥の方に沈んで溶けて。 心に深く染み込んで、ジワ、と痛みが広がって。嗚呼、あたしは傷付いてるんだって今更分かった。
/474ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2255人が本棚に入れています
本棚に追加