17.愛される女

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あたしがそう言えば、ついに浅倉君は目線を逸らした。バレてしまったかと言わんばかりに分かりやすく視線を逸らした。 「あー…」と天を仰いでいる。あたしの言葉に動揺したのかもしれない。必死に言い訳を探しているのかもしれない。 誤魔化すことなんかせず、素直に吐いたらいいのに。日南志保さんが好きだって言ったらいいのに。 あたしはもう十分傷付いているから、今更何を言われたってどうってことないのに。 「そん時は、」 数秒してあたしの顔に返ってきた視線はバツの悪そうな色をしていた。 「確かに志保は部屋にいたけど、別に何もしてないし」 「…浅倉君がそんな奥手なわけない」 「…、…2人だけじゃなかったよ。もう1人男いて、そん時ちょうどトイレ入ってた、確か」 「…嘘、ばっかり」 「嘘じゃねーって」 語尾を強めて、浅倉君は真剣に否定する。 部屋に他にも人がいたなんて、今確かめようのない事実を言われても信じられるわけがないじゃないか。 負けじと浅倉君を強く見据えれば、その分真摯に見返された。
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