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前から茉菜さんの手が伸び、グイグイあたしに財布を押し付ける。「え、」と目を瞬かせると茉菜さんは未だきゅうりを持ったままにんまりと笑っていた。
「結衣ちゃんが浅倉君と付き合えたお祝いでしょー。お願いだから払わせて、ね?」
「…でも、」
「いーから!浅倉君来ちゃうんでしょー早く行かなきゃ」
「、」
ズバっと酔っている茉菜さんに当てられてまごついた。さすが、茉菜さん。鋭すぎる。
「えー?!これから浅倉君と会うの?!やだーやらしー!」と妙な妄想をし、キャッキャしている明日香は放置してあたしは茉菜さんに頭を下げた。
「ホント、ありがとうございます」
「いーってことよ!早く行きなって!」
シッシと追い払う仕草をされ、あたしは席を立った。
またねー!と店内に響き渡るドデカい声を出す2人に見送られ、居酒屋を急いで出る。
ガララ、とドアを横に開けて外の世界へ。入る前は少し薄暗いだけだったのに、今はすっかり暗闇だ。
黒で染まる道にキョロキョロと左右に瞳を動かしていれば。
「結衣ちゃん」
「っ、」
左から聞こえた声に心臓が口から飛び出るかと思った。
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