2.変わらない女

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「……もうダメだって、知ってる」 彼の顔を見て情けない笑みを浮かべる。彼の眉間の皺が深くなったのを見て、あたしは口角をもっと上に。 「この関係に価値なんてないし、あたしは浮気しても許してくれるアホな女だって思われてる。大事になんかされてない」 彼が何度もあたしに縋ってくるのは、ただそれだけが理由。浮気を許してくれる都合のイイ女だってなめられてる。 あたしの存在価値なんて、そんなもん。浮気した彼氏が帰ってこられる、安いボロアパート。 ボロボロになったものを、今更綺麗にしようと、大切にしようと思うわけがないんだ。 「笑っていいよ、浅倉君」 あたしがこんなアホでバカで面倒な女だから、浅倉君だってあたしをフったんでしょ。 ちょうどアパートの前。足を止め、彼を見つめるも何も言ってくれない。こういう時こそ「アホだな」って笑ってほしいのに。バカにされた方が、逆に潔いのに。 「家。ここだから」 指を差したアパート。あたしと彼はここでお別れだ。 「送ってくれてありがとう。じゃあ、」 「吉村、」 ‘さん付け’じゃなくなったと気づいたのは、彼に呼ばれて数秒後。半分体をアパートに向けていたあたしはワンテンポ遅れて振り返る。 睨まれていると誤解される目であたしを見る彼。 「なに」と開きかけていた口は彼によって閉ざされる、のではなく。 「結衣……?」 鼓膜を叩いたその声にあたしの肩は大きく震えた。
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