悪役令嬢にはブラック企業で働いてもらいます

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「解決、したみたいだね」 八木杉に謝る橘先輩を見ていたらしい理沙が私に話しかけてきた。 「そうみたいね」 「また何かしたんですか」 総司が私を見た。 八木杉も理沙も私をみる。 「何もしてないわよ。よかったじゃない」 「溝沼さん」 八木杉がわざわざ私の席に来て、微笑んだ。 「ありがとう」 「何もしてないってば」 帰りに、グループラインが来ていた。 次の休みに相澤も交えて焼肉を食べに行こうというものだった。 焼肉ね...想像しただけでお腹が空いてきた。 行けたらよかったんだけどね。 *** 「話って何ですか」 当たり前のように女子寮の私の部屋に入ってくるのはいつものことだから今日の夜って言ったわけだけど。 「私ね、地獄に行こうと思うの」 私は、元は最低の令嬢で、元々即地獄行きだった。地獄は本当に恐ろしいところで自分の罪を悔いても謝っても絶対に許してもらえない。 一生地獄の業火に焼かれながら苦しみ抜くのが地獄。 それを、神様のお慈悲とやらでブラック企業で働くことにより転生させてもらうという話だったわ。 「どうしたんですかいきなり」 「どうしたもこうしたも、私は元々即地獄行きだったんだから、やってる事は変わらないわよ」 「...溝沼さんに、今回の八木杉さんの件で何かしら心の変化があったんですかね」 「いえ、前から少しずつあったのよ。少しずつ、少しずつ、この世界の人たちと関わっていくうちにね」 「そうですか。まだ少し猶予がありますがいいんですか?」 「いいのよ。私、猶予をダラダラ過ごすときっと、転生しにくくなっちゃうし、それにもう決めたの」 「松下さんや、八木杉さん、相澤さんだって、悲しみますよ」 「...私は、前世で本当に最低な事をしてきたんだもの。本当に、人を人とも思わないようなことをしてきたわ」 だから恨まれて、無実の罪を着せられて処刑された。 皆は、燃やされていく私をみて喜んでいた。私が悪魔みたいな女だったから。 誰も、悲しんでなんてなかったわ。 「だから、いいのよこれで」 悲しんで、くれるかしら皆は。 「それに、総司は私を地獄に堕としたかった人でしょ?何で止めるようなこと言うのよ」 無理に笑顔を作ると、総司は真剣な顔をして私をみていた。 「確かに溝沼さんは、前世で最低な事をしました。人間のクズ。人を人と思わない最低最悪の令嬢でしたね」 「えぇ」 「はは、最初はそんなの認めようともしなかったし、自分は悪くないの一点張りだったじゃないですか。どうしちゃったんです?」 「考えが変わったのよ。私は楽しくここで過ごしていいような人間じゃないの。もう決めたのよ」 「もう地獄に堕ちたら、ここでは貴方が死んだ事になって、もう2度と皆さんとは会えませんよ」 「...いいわよ。私には勿体ない...そうね。仲間達だったわ」 私は、人を人とも思わないような人間だったわ。 でも、ここで色々な人と関わっていくうちに、少しずつ変わっていった。 自分は、地獄に堕ちて自分の過ちを悔い続けないといけない。 覚悟はもう、できてるわ。 でもどうしてかしらね。 涙が止まらないの。 皆に会えないって。 山をヒィヒィ言いながら登ったのを思い出した。皆で写真を撮ったわ。 机に飾ってあるの。 お花見の時、一人でお弁当を食べていた時に皆が声をかけてくれたのを思い出した。桜がとても綺麗だった。 相澤が職場に来て、皆で一緒に仕事をしたのを思い出した。 愚痴愚痴言いながら頑張ったわよね。 海に行って、遊んだのを思い出した。 迷子を探すのは大変だったわ。海が本当に広くて、綺麗だった。 初めて友達ができた。 初めて仲間ができた。 初めて感謝された。 「どうして泣いているんです?」 「わからない...わからないわ」 本当は分かっていたのよ。 皆と離れるのが悲しいの。寂しいの。嫌なの。 でも、そんな事を私にいう資格なんてないのよ。 「溝沼さんが、そこまでおっしゃるなら」
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