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……葵は今頃、どこで何をしてるんだろう。
葵は賢かったから、
きっとスーツを着てテキパキ仕事をこなすバリキャリになっているんだろうな。
静かに息を吐いただけなのに、
それは想像以上に重いため息となって
私の口から溢れた。
そんな時。
「探したよ!桜井 桃葉!いや、マジカルフューリングピーチ!!」
聞き覚えのある甲高い声に、肩をすくめる。
後ろを振り返ると。
ベンチの背もたれの上にちょこんと座っていたのは、オコジョを少し大きくしたような、しっぽの長い生き物だ。
真っ白い身体だけど、耳の先端だけ薄緑という、現実味のない出で立ち。
「え、あの、え……?」
「忘れたの?!
僕だよ!ポニョンだよ!!」
思考が一瞬、フリーズする。
脳内に流れてきたのは、あの頃の光景。
戦う私達の横で、応援し、指示を出し、
跳ね回っていたあのフワフワした生き物。
「ぽ、ポニョンんんん???!!!」
私は立ち上がり、その物体を見つめ絶叫する。
私達の後ろを通った子連れのお母さんが、
「目を合わせちゃだめよ」と言いながら走り去る音が聞えた。
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