ポニョン

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「いやー!!前の家に行ったんだけどさ。 桃の部屋、物置きみたいになってるんだもん!」 「……まぁ、実家を出て結構経つからね」 私はミルクを平皿に注ぎ、ちゃぶ台の上に置く。 台の上に座るポニョンは、 それをさも当然かのように、舌でペチャペチャと舐めた。 「それにしても、ここが桃の新しい家? 前の家に比べて狭いねぇ〜!! 前はリビングもダイニングも分かれてたし、部屋も沢山あったのに!」 「家っていうか、賃貸のワンルームだからね」 「どうしてわざわざ、こんな狭い家に住むの?前の家、嫌いなの?」 「嫌いじゃないけど……」 私は口ごもる。 私はこれでも3人姉妹の長女だ。 が、年子の妹は2年前に結婚。 その下の妹も都心での就職が決まり、家を出た。 「一番上のあんただけが、売れ残りだねぇ〜」 そんな母さんの愚痴にウンザリして、実家の方が職場に近いにも関わらず、家を出たのは1年半前。 非正規の給与だ。贅沢はできない。 私はかろうじてオートロックが付いているこの7畳のマンションに越したのだ。
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