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沢田くんと……
「もういいよ。沢田くんが来てくれただけで嬉しい」
私は微笑んだけど、沢田くんは顔をあげてくれない。
「それだけじゃない。今までのことも……【親と佐藤さんの板挟みになって、やっと気づいたんだ。森島くんたちと行くか、俺と行くかで板挟みになった佐藤さんの辛い気持ち……。それなのに俺ってやつは、森島くんと俺どっちが大事なの? なんて子供みたいなことを言って、佐藤さんを困らせて……。ああああの時の俺のバカバカバカバカ! あんぽんたん! おたんこなす!!!(((((;`Д´)≡⊃)`Д)、;'.・】」
沢田くんの肩が震えている。
私は沢田くんに一歩近づいた。
【こんな俺、さすがに嫌いになったよな、佐藤さん……】
「沢田くん」
震える肩にそっと触れると、沢田くんが前傾姿勢のまま驚いたように顔を上げた。
目の前いっぱいに沢田くんの顔。
打ち上がる花火さえ見えないくらい近づいて、
彼の唇にキスをした。
聞こえるのは、真上で弾ける花火よりも大きな、私の鼓動だった。
それから、沢田くんの……。
【ひゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ〜〜〜⁉︎:(;゙゚'ω゚'):】
最大級のパニクり声。
じんじんと甘く切ない熱の余韻を残してそっと唇を離すと、回路が壊れて放心状態の沢田くんがいた。
【あっ……あっ……い、いま、佐藤さん……。゚(゚´ω`゚)゚。俺に……キ、キ、キ……】
沢田くんの顔が夜目にも分かるほどみるみる赤くなっていく。
もうだめ、可愛すぎてたまらんっ!
私は沢田くんの浴衣の胸に抱きついた。
「好き……!」
ドーンとでっかく三尺玉。パラパラと落ちる光が、流れ星みたいに尾をつけて、夜空に大輪の花を咲かせる。
私はそれを、沢田くんの腕越しに見えた川面の光の中で感じた。
こんなに綺麗な花火は、初めて。
「大好きだよ、沢田くん……」
「佐藤……さん……【俺もーーー!!!。゚(゚´Д`゚)゚。♡♡♡♡♡♡】」
花火を見ている人々が、抱き合う私たちを祝福するように歓声を上げた。
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