沢田くんと初つぶやき

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沢田くんと初つぶやき

 沢田くんの心の声が面白いことに私が気がついたのは、クラス分けが決まって彼が私の隣の席になった当日。今から一週間前のことだった。  正直、沢田くんの隣の席になるなんて、最初は嫌だった。  私の経験上、イケメンと呼ばれる人ほど性格に難がある。ものすごくプライドが高くて周りを見下しているとか、ものすごくナルシストだとか、女の子を顔でランク付けして態度を変えるとか、そんな人たちばかり。  森島くんなんて典型的にそういう人で、ある意味分かりやすくて非常に助かる。この教室に入ってくるなり、彼が初めてつぶやいた言葉は、 【俺が一番カッコイイな】だった。  自分に自信があることを悪いとは言わないけれど、私はちょっと苦手で敬遠したいと思ってしまった。   私の予感した通り、彼はその日のうちにクラスの女子の半分とメッセージアプリのアドレスを交換して、モテ男ぶりを遺憾無く発揮していた。  ちなみに私はいまだに彼とアドレスを交換してはいない。  聞かれていないからじゃない! と強く否定しておこう。  まあ、実際聞かれていないんだけど。  そんな『イケメン恐怖症』とも言えるこの私が、沢田くんのような完璧な美男子を前に臆さないわけがない。  しかも沢田くんは一匹狼タイプ。孤高を愛しているに違いない。なるべく話しかけないでおくのが吉だろう。  とはいえ、私は常識人。  初めましての挨拶くらいは、どんなに苦手な人でもするべきだと思っている。その後は一切話しかけなくなったとしても、「これからよろしくね」くらいの社交辞令は当然口にするべきだと思っている。  沢田くんの隣の席におそるおそる座ると、私はこっちを見ようともしない沢田くんに向かって、無理やり笑顔を作って言った。 「沢田くん。私、佐藤景子。一年間よろしくね」  私の声に気がついた沢田くんが、ゆっくりこちらを向く。切れ長の美しい瞳が私を捉える。  その瞬間、彼の声が聞こえてきた。 【えっ! なに今この人、俺になんて言った? ……そう言った? うわ、そんなこと言われたの初めてで泣きそうなんだけどーーー!!!】  ……えっ? と私は耳を疑った。  だって、彼の表情は完全な「無」で、どちらかといえば冷たい印象なのだ。  それなのに。 【よろしくって言えよ、俺! ほら、早く! 言えってば言えよもう! あーもう5秒経った。もう無理。はい無理。チャンス逃したー! だからお前は友達いないんだよチキン野郎! もう佐藤さん、二度とお前なんかに話しかけてくれないからね! 一生ぼっちだから、お前なんか。いやお前って誰だよ。俺だよ俺! 二重人格のフリしてるけど一人だから! 中の人なんていないから! はーいもう10秒経ちましたー。残念ながら終了です。チーン_(┐「ε:)_】  ……なにこの反応。  めちゃくちゃ可愛いな!!!    
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