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笑いを堪えて震えていると、背中がトントンと叩かれた。
振り向けば、後ろの席の佐藤麻由香ちゃんが「大丈夫?」と心配そうに小声で聞いてくる。
「大丈夫って、何が?」
「今、沢田くんに睨まれてなかった? 【沢田くんってイケメンだけどちょっと怖いなー】」
【ドキッ】
沢田くんの心の声がする。私たちのヒソヒソ声がどうやら聞こえているらしい。
【ヤバい。俺、佐藤さんを睨んだと思われてる。もう嫌われた? 10秒黙って見つめてただけでもう嫌われた? どんだけ嫌われ者? 生きる価値なし】
「ううん、そんなことないよ!」
私は思わず声を大にして言ってしまった。
「沢田くん、きっと戸惑っていただけで、睨んだわけじゃないと思うし! 私は全然大丈夫!」
「そう? 意外と勇気あるね、景子ちゃん【地味なくせに】」
麻由香ちゃんの心の声の方が傷つくなあ、なんて思った時だった。
【なに……佐藤さんて、天使なの? 光属性強すぎて目が潰れるよ! 誰か俺にグラサンをくれ! 尊みがすぎる! なんてイイ人なんだあああ! オロローン。゚(゚´ω`゚)゚。】
沢田くんのピュアすぎる心の声が私の胸をくすぐった。
やっぱり可愛いなあ、沢田くん。
沢田くんの方が天使だよ。
チラッと沢田くんの方に目をやると、沢田くんも私のことを一瞬だけ見てすぐに目を逸らした。
【やっべえーー佐藤さんと目が合っちゃったよ! どうしよう、ドキドキしてきた! これ以上佐藤さんに嫌われないようにするにはどうしたら……! あ、そうだ。挨拶だ。挨拶をしよう! 睨んでないってことをアピールしなくちゃ! 勇気だ。勇気を出すんだ、沢田 空!】
沢田くんが勇気を出して私に声をかけようとしている……。
なんだか、こっちがドキドキしてしまう。
頑張って……!
私の心の声は沢田くんには届かないのが分かっているけど、つい大声援を送ってしまう。
そして、とうとう沢田くんの口が開いた!
「………………………あ」
キーン、コーン、カーン、コーン。
【チャイムに消された_(┐「ε:)_ズコー】
ズコーじゃないよもう。
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