異世界転生

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異世界転生

 俺は事故死した後、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。此処が地球ではない事は直ぐに解った。俺を産んだと思わしき女性の耳が長く、不可思議な力で俺をあやしていたからだ。そう、所謂異世界転生した様だ。  不可思議な力の正体は精霊と思わしき実態の無い、淡く光った球体だった。女性はその球体に指示を出して俺を世話していた。いや、自分で世話しろよ。  数日間様子見していて解った事は、話す言葉が日本語ではなく、女性以外の人間が居ない。どうやら母子家庭で父親は不在。  俺に語りかける言葉と精霊に語りかける言葉が少し違っているみたいだが、どちらも何を言っているのか解らないので考えるだけ無駄か。  一年目、ようやく女性が話す言葉が解り、あー、だのうー、だのと身振り手振りと一緒に対応すると、笑顔で俺を撫でまくる。少し鬱陶しい。  二年目、妖精に語りかけていた言葉が少しだけ解ったので、女性が寝ている時や、食糧調達等で外出している間に指示を出してみた。  最初は指示を出した瞬間に意識を失ったが、今では問題なく操れるようになった。どうやら精霊に何かをさせる祭に、対価として自身の精神力(MP)を支払う必要があり、尽きると気絶する。  三年目、片言だが少し喋れる様になり、コミュニケーションが取れた事で、外出が許可された。  家の構造は把握していたが、窓の外から見える風景は森だけで、周りに何が有るのかさっぱりだった。 「これが外の景色か・・・」  右も左も森、振り返り木々に囲まれた我が家を見れば、大きな木の中に扉や窓が付いていた。大樹そのものが我が家なのだ。  庭には畑が有り、沢山の野菜や果実が実っていた。季節感が無い多種多様な実りは精霊によるものだと判断した。毎日違う果物が食べられたのは、その為だろうから。  四年目、女性と共に森の中に入った。森の中は魔物の巣窟でした。大樹が蠢き、火を吐く翼竜が飛び交い、巨大な獣が犇めく人が踏み入れたなら帰る事叶わぬ死地。  しかし、俺は女性に手を引かれて魔物の間を通る事も有ったにも関わらず、存在に気付かれず進んでいた。まるで散歩道を行くかの様に平穏無事だ。  気分は安全な車内からサファリパークを見て廻る客。まぁ、実際は精霊が俺達を外敵から守ってくれているのだろうけれど。 「貴方にはこの森の主に会って貰うから。少し大きいけれど、恐怖で泣き叫ばない様に」  女性、いやさ母様からそんな事を言われた。聞いてないよ、村長か何かに会いに行くものだと思っていましたよ俺は。  今さら帰るわけにもいかず、森の奥へと進み家の大樹よりも更に大きな巨木の元に辿り着いた。世界樹と言われても信じる巨大さ。雲がかかってますやん。  そして、幹の上に胡座をかいている巨人が俺をじっと見つめていたりするのだが、まさかアレが主だとか言わないよね?
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