成長

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成長

「コイツがヤツの忘れ形見か」  身の丈10メートルを越える巨体から発せられた声に大地が震えた。もしも、大声を出したなら俺なんて軽く吹き飛びそうだ。 「はい、既に精霊を操れる位の才能は有ります」  ばれてーら。秘密にしていようと思っていたんだが、お見通しだったか。精霊にチクられたか? 「ほう、天才と言われたお前が確か7歳で出来るようになったと言うのにか。未だ5歳にも満たぬだろうにコイツは」  俺を視ながら母様と会話している巨人。完全に俺は置いてけぼりだよ。其にしても仲良しそうだなおい、後父親の事知ってそうな雰囲気だし。 「それにヤツと同じ眼を持つか、目覚めているのか?」  今明かされる俺の真実。眼の色が母様と違っていたのは父親譲りだったのか。 「いいえ、覚醒には至っていません」  中二病なワード来たコレ。俺何か凄い力を秘めてる系? 「そうか、ならば覚醒した暁には我の力を授けてやろう。ヤツにもくれてやったモノだ」  そして、俺が一言も喋る事無く家路に着く。無論俺はオシッコなんかチビってないし、母様の服を涙で濡らしてなんかいない。今日は夜部屋から絶対に出ない。  五年目、俺は5歳になり少し離れた所に有るらしい、隠れ里へ行く事になった。何でも5歳まで健康に育つ迄は親族以外に逢わせない様にしていたのだとか。森の主には去年逢ってますが何か?  森の奥、これまたデカイ大樹が聳え立つ場所に出ると、木製の外壁に囲まれた里に着いた。門の前には2人の男達が、弓を背負い槍を手に持ち立っていた。 「こんにちは、村長に会いに来たわ」  母様に対する返答はなく、男の1人が門を挟んだ向かい側に建てられていた物見八倉に居る別の者に指示を出して開門させた。  門を潜ると、眼前に案内人なのか女性がお辞儀した状態で待機していた。顔を上げた女性は無言で振り返り前を歩き出す。  誰か言葉を発する方はいらっしゃいませんか?  後で聞いたら納得だったのだが、俺の周りには母様による精霊の護りが施されており、迂闊な事を口走るだけで敵対行動と捉えられてしまい、撃退されるのを防ぐ為に誰もが無言でいたのだとか。口は災いの元かよ。  暫く歩いた先に有った一際豪勢な造りの屋敷に入り、其処でようやく話しかけてくる者が現れた。 「姉さんの子供、立派に成長した様ね」  広い別部屋の中に居た長老様っぽい人の横に座していた母様そっくりな美女が発した言葉に俺は内心で叫んだ。  姉妹エルフ来たコレ!  俺は浮かれて気付かなかったが、部屋には老人と美女以外にもう1人居て、その者と生涯にかけて師弟の関係になるとはこの時全く思いもしなかった。
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