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従姉なるもの
母様と美女は俺そっちのけで話し込んでいる。老人は寝ているかの様に一言も喋らない。何方か話し相手はおりませんか?
「母上、私の紹介はまだでしょうか?」
「あら、いやだ、久方振りの再開でつい。姉さん、この子は私の娘で一つ年上よ」
美女の後ろで控えていたのか、影が薄かったのか、言葉を発した事で彼女の存在に気付いた。
背が俺より高い事から年上であるのは解ったが、名前を紹介しないのは何か意味でもあるのだろうか?
「彼の面影が有るわね。旦那はアイツで良いのよね?」
「そうよ、今はこの里を離れているから会わせられないけれども」
処で、何時になったら老人の正体が判明するのか。村長と思われるが未だ話題にならない。お爺ちゃん寝てますよね?
「貴方が従兄弟なのね。私の事は姉上と呼ぶ事を許してあげるわ」
上から目線の彼女は、長い髪をかきあげ俺を見下して来た。俺がいくら年下だとて、舐められるのは如何なものか。
「年上を尊ぶのは吝かではありませんが、自分より格下を敬う気にはなれません」
視て解ったが、彼女の周りには精霊が全然居ない。何より俺の周りに纏わりついている母様が施した精霊達に気付いてすらいない。
「な、生意気なガキンチョね。母上、叔母様、教育は必要ですよね?」
美女と母様に一応の許可を得ようと蟀谷をひくつかせながら拳を握り締める。ふむ、彼女は肉体言語で語らいたい模様。
「良いわよ、護りも外してあげるわ。出来るものならやってみなさいな」
母様が挑発してどうするんですか。顔を真っ赤にした彼女が美女のやれやれとした顔を見る事なく俺に襲い掛かって来ましたがな。
「せっかちですね。せめて部屋の外で始めませんか?」
俺の顔すれすれに彼女の渾身と思わしき拳が停止しているのに驚愕している様だが、精霊が止めてくれている事にはやはり気付いた様子がない。
「叔母様! 護りを外してくれたんじゃないのですか!?」
「とっくに外しているわよ。でなければ貴女が五体満足で私の愛しい息子に手を挙げれる訳ないじゃない」
過保護過ぎです母様。それだと俺にすれ違い様に少しでもぶつかった他人は五体満足でいられないと言う事では?
「そんな、それじゃこの現象は彼がやっているの!?」
「姉さんの子供なだけは有るわね。もう精霊を使役出来るなんて。しかも精霊の方が積極的に護っていたわ」
流石は母様の妹、精霊の取った行動を正確に読み取っている。
「母様、村長と話はしないで良いのですか? 邪魔なら彼女と一緒に席を外しますが」
「その必要はない。孫にも関係有る事なのでな。二人とも部屋に残っておれ」
老人から声が発せられた。途端に彼女は俺から離れて姿勢を正して座り直す。老人に対しては良い子振りたいのか、単に怖がっているのかは判断がつかないな。
威厳に満ちていそうだが、せめてヨダレは吹いて下さい。寝てたのバレますよ。
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