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おかげ様で。という気分だが負けた気がするので言わなかった。
「朝食、焼き魚食いたい」
全く関係ないことを言ったのに、田中がまともに返してきた。
「……鮭でいい?」
「うん」
「了解」
畜生。ベッドが狭い。背中が熱い。
そもそも、ベッドは野郎二人で眠るものじゃない。
眠ろうとするのに、眠れなくて、朝チュンが聞こえてきた時には気持ち悪くなった。
「柴崎の目の下のクマすげーよ?」
誰のせいだ。おい。
「今朝、鮭を食べるのがあんまりに楽しみでね……」
渇いた笑みを浮かべるしかできない。
「遠足前の小学生かよ」
ここで一句、イケメンを 日曜朝に 独り占め。
五、七、五に無意味に当てはめたところでお待ちかねの鮭が出てきた。
そのまま食べるのかと思ったのだが、田中はどうやらお茶漬けにするようだ。
「柴崎、体調悪そうだしね。あったかいものにしよ」
お前のせいだと言いかけ、思わず息を飲む。
腹が立った。
なぜこんなにも田中如きに一喜一憂しなければいけないのか。
「柴崎」
「ん?」
また唇を奪われた。固まるしかなくて田中を見つめる。
「なんでだと思う?」
質問したいのはこっちだよ。
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