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田中の胡散臭い笑顔を流し見つつ、何も無かったかのように手を合わせるとお茶漬けをひたすら掻き込んだ。
「捨てるなら頂戴」
柴崎のはじめての印象は最悪だった。
毎日、毎日、食堂のプリンを一口食べては捨てる男。
普段なら気にもとめないのだが。
思わず声をかけてから、毎日プリンを奪い、もとい貰うようになり、柴崎とご飯をたべるようになり人となりを知っていく。
食事に妙にこだわりがあり、食べたがりのくせに、気分に左右され食が細い。
甘いものは一口目だけがおいしいと言ってのけ、要らなければ捨ててしまう。
神経質で、箸の持ち方をそれとなく注意すれば、二十年近くこの持ち方を今更かえる必要はないと聞く耳を持たず。
頑固な上に食べ物を粗末にする最低な奴。
唯一、褒めるとすれば「いただきます」と「ごちそうさま」だけはすること。
当たり前のことなのだが、柴崎に至ってはこの当たり前のことは出来るのだと思うと感動すら覚えた。
「なんでだろーな……」
好きになる要素など微塵もない。
それなのに気づいたら柴崎を目で追い、食事を共にし、好きになっていた。
「田中、お前は変人だな」
「どういうこと?」
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