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「俺と飯を食いたい変人はお前だけだってことだ」
柴崎は田中の邪な想いをまだ知らない。
「……まー、強ち間違いではないな」
「は?」
田中は首を横に振る。
「なんでもないよ」
じっくり時間をかけていこうと決めている。
柴崎が怯えないように。
まるで真綿で首をしめるかのように徐々にでいい。
田中は笑顔を見せると柴崎の唇を奪った。
「な、なに?」
これからも柴崎に合わせていく。
「さー、何だと思う?」
「質問を質問で返すなよ。もう知らん」
「怒らないでよ」
我が儘さえも愛していく。
甘やかして、甘やかして、そしてーー。
最後の日までコイツと飯を食っていきたい。
「林檎食う?」
そう言って、柴崎は田中の前に林檎を差し出した。
「剥いてないじゃない?」
「うん。俺、剥けないし」
林檎を食うかと差し出しといて剥けないと言う。
田中は立ち上がり台所へ向かうと包丁を取り出した。
柴崎も後を追うように付いてきて、冷蔵庫に寄りかかる。
「別に見てなくてもそっちに持っていくよ?」
遠回しに邪魔なことを伝えたつもりなのだが、柴崎は待っていた。
「なぁ、ウサギにして?」
「なんでウサギ?」
「可愛いくね?」
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