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「はい」
柴崎優也のスマートフォンが鳴ったのは日が落ちた頃。
着信画面を一瞥し通話に出ると、聞き馴染んだ声が聞こえてきた。
『俺、だけど』
「……ん、どしたの?」
通話の主は田中孝臣という。
『今、なにしてるかなって思って?』
今日は教授が学会に出るとかで必須単位の講義が休講になったのでお気に入りのアイドルが載っているグラビアを片手に持ち、昼から寝落ちしていたとは言いたくないので嘘をつく。
「……ドイツ語の予習」
『うわ、そりゃ大変だ』
「お前も来年ドイツ語選択すりゃいい」
『んー、是が非でも遠慮したいかな』
(うん。俺も来年は履修しない……)
「……で?」
何となく予想はついたが、一応聞いてみる。
『ああ、うん、今日メシ一緒できる?』
「今、何時?」
『あと……十分くらいで十八時』
手近にあった目覚まし時計で時間を確認する。
「学食?」
『うん。学食』
「……行く」
朝も昼も食べずに寝ていたので腹が減っている。
『今日のA定食はみんな大好きすき焼き定食だぜ』
「それはときめくな」
『だろ、待ってる』
「ああ」
柴崎は通話を切ると、家電を消す。そして田中が待つ学食へ行くのであった。
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