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「おい」
声をかけると、眼鏡をかけたインテリ風イケメン男が振り向いた。
「待ってたぜ」
コイツが、田中。
満面の笑顔で、人の頭を撫でるのが癖だ。それを手で払い退けるまでがいつものやりとりである。
「腹減った、早く食堂のおばちゃんにA定作ってもらおうぜ」
田中の後を追いかけようとしたら、にこやかに微笑んだ田中が柴崎の行く先を阻む。
「あ、柴崎は席とっておいて」
「お、おお……」
田中とメシ友になってから気づいたこと。
田中は気が回る。
だから、女子にも好かれる。
だけど、田中はなぜか俺と飯を食う。
考えるとなんだか頭が痛くなるから考えないようにしてる。
だって俺は、田中を語れるほど田中を知らない。
田中とは学部もそもそも違うのだ。
ただ、たまたま食堂で会って、たまたまメシを食うようになっただけ。
俺たちの関係はそれ以上でも以下でもない。
「いただきます」
柴崎と田中は手を合わす。
食堂の窓際から二番目の壁際席が定位置だ。
柴崎が上座に座るので必然的に田中は下座になる。
食事の最中お互い会話はあまりない。
元々共通の友人もいないし、学科の選考すら違う。
それではなぜメシを一緒に食うのか。
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