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「悪い。待たせた」
「別に、待ってない……」
何事もなかったようにさらりと謝罪をした田中はやはり終止笑顔だった。
やっぱり田中は良くわからない。
ま、知りたくもないけど。
ただ、鯖煮込みの味が気のせいかも知れないがするようになった。
少し遅めの昼メシを食べる。
空は高く、空気は澄んでいる。
メシを食べることは喜びだ。
背筋を正し、手をあわせる。
ふ、と目の前をみると男が微笑む。
何が嬉しいのかわからないが田中は柴崎の食べるところを見るのが楽しいからだと言った。
首元がこそばゆい時間が流れていく。
別に害があるわけではないので問題はないが、なんだか心臓のあたりが複雑なのは気のせいだろうか。気のせいだろうと思いたい。
「田舎から食材が送られてきたんだ。今度振る舞うよ」
なんとなく分かってはいたが、田中はイケメンで、料理も出来る男らしい。
「あ、柴崎って嫌いなモノある?」
「ない、けど……」
「けど?」
「お前のハイスペックさ、なんなの?」
「え? 俺ってハイスペックなの?」
自覚がないことほど罪なことだとしみじみ思う。
「でも柴崎にも思ってもらえているってことは、そうなのかな?」
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