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愛してるよ
「愛里、好きだよ。陳腐な言葉だけど、愛してる。本当だよ。
『いつも私のどこがいいの』なんて言うけれど、それはもう全てだよ…
いや、君の答えはわかっている。
『全部なんて答えてないのと同じ』と言うんだろう。仕方がないな」
彼女は無表情に一点を見つめている。
私は右手の人差し指と親指で耳たぶを挟むとゆっくりと撫でた。
「ありきたりだけどね、まず見た目が好みだよ。
顔はアイドルそのものって感じだよね。長いストレートの黒髪をきれいに切り揃えてさ、パッツンって言うんだっけ?
前髪は目元ぎりぎりの絶妙なところでキープされてるね。
目が大きく見える効果もあるみたいだけど、愛里の目はもともとくっきりした二重だからどんな髪型でもいいと思うよ。
すっと通った鼻筋の下には小さな口、薄い唇が好きだな。
すごく扇情的っていうか…ってごめんごめんえっちなこと言わない約束だったね」
彼女も白く透き通った肌と尖った顎を見ていると自然と目尻が下がった。口元も思わず緩くなってしまう。
いけないいけない、彼女の前では締まりのある男であらねば。
私は唇を引き結ぶと彼女の内面について語り始めた。
「見た目はまさにアイドルなんだけどさ、かなり家庭的な面もあるよね。
ライブの後とか疲れてるのに自炊してるし、衣装の手入れもマメにやってる。愛里は偉いね。
掃除はちょっと苦手みたいだけれど、そうゆうところも可愛いと思ってるよ」
彼女は関心がなさそうに天井を見上げている。
「私は愛里の全てを受け入れるよ。
もう何も怖くないからね」
床に倒れている彼女の手をそっと握ると、すっかり冷たくなっていた。
辺りは血しぶきで真っ赤に染まっていた…
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