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知り合い以下恋人未満
「あの警部、ちょっとよろしいでしょうか」
「どうした」
「追立なんですが、典型的なストーカー加害者だったことは間違い無いと思うんです」
「それで」
上司はいぶかしげに先を促してくる。
「ストーカーに発展しやすいケースは、もともとカップルだった男女の痴情のもつれですよね。
しかし被害者のスマホ、他の方の証言からその可能性はあり得ません」
「うん」
言いながら視線をずらす。
「唯一の接点は追立の言う通りライブハウスのようですが、オーナーの証言によると
『いつも隅で見ていたし、アイドルと直接コミュニケーションできる特典会にも来ていなかった』そうですね」
警部はもう返事をしなかった。
「それに決め手は被害者宅の近くのコンビニなんです。
小林さんのアパートに行くにはここを必ず通るはずですが、過去3カ月の防犯カメラの映像を見ても追立が写っているのは事件当日だけ」
つまり被害者と加害者が初めて言葉を交わしたのは殺人の直前のみということだ………
「愛里、好きだよ。陳腐な言葉だけど、愛してる。本当だよ。
『いつも私のどこがいいの』なんて言うけれど、それはもう全てだよ。
いや、君の答えはわかっている。
『全部なんて答えてないのと同じ』と言うんだろう。仕方がないな」
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