冷たい彼と熱い私のルーティーン

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駅から歩いて5分ほどのオートロック付きマンションの玄関前で立ち止まる。 「・・・ここです。ありがとうございました。」 「・・・ああ、じゃ。」 そう言って(きびす)を返した春野さんの背中に思わず声をかける。 「あ、あの・・・!」 「何?」 振り向いた顔は相変わらずお面みたいに無表情だ。彼の表情はだいたい不機嫌顔か無表情のどちらかだった。 「エントランスで3分くらい待っててもらっていいですか?どうせまだ電車来ないし。」 返事も聞かずに階段を駆け上がり、家に入って急いでケトルでお湯を沸かし、雑誌の付録の125mlのステンレスボトルの中に注ぎ、柚子茶の素を入れてかき混ぜる。それと商店街の福引きのハズレ景品としてもらった貼らないタイプのカイロを掴んで春野さんの元に戻る。 いないかもな、と思ったら所在なげにそこにいた彼にボトルとカイロを差し出す。 「柚子茶とカイロです。ボトルは付録のやつなんで返さないでいいですから。」 「・・・おお。」 初めて見た、困ったような照れたような彼の表情は私の心をツンツンとつついた。
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